宙にあけた穴 -4ページ目

家族

ある日家へ帰ると妻が泣いていました。その日も仕事が遅く申し訳ないな、と思いながらの帰宅でした。何かあったのかと驚き尋ねると、特段何があったわけではないが、最近ずっと孤独感を感じていて、今日は特に耐え切れなかったとのこと。・・・何かの限界が近づいているのかもしれません。

禁句

彼女はまだまだ若く、今すぐに結婚したいと言う話にはならないと思っています。ならばもし、妻と離婚すれば、誰もさほど傷つかず上手くいくのではないか?・・・最近そんなことばかり考えています。

風邪

ここ数日風邪を引いていました。39度近い熱を出し、会社からは車で帰社せざるを得ないほどこじらせていました。そんな中、「いますぐ飛んで行きたいよー」「ちゃんとご飯食べてる?」と気遣いのメールをくれる彼女。朦朧とする意識の中、やり取りするメールや写メを支えに過ごした数日でした。

性格

妻は非常に精神的に弱いところがあります。複雑な幼い時の育ち方にも関係するのだとは思いますが、一人になることを極端に恐れるのです。結婚した時も、そういった、「一人で生きたくない」「はやく家族が欲しい」という彼女の想いに引きずられる形で、僕の両親の承諾を得られる見込みのないまま、結婚しました。もちろんその時の、彼女を支えていきたいという僕の思いは、確かなものだと思っていました。

そんな彼女に「他に好きな人ができた」なんて言ったら、彼女は死んでしまうかもしれない。・・・違うな、僕にはその状況は耐えられない、だから何も言えないでいます。

デート

今日は仕事のあと、彼女とデートでした。彼女と彼女の友達がお茶している所に呼ばれました。友達と話をする彼女は、僕といる時の彼女とは少し違い、改めてかわいいなと思うようになりました。「私たち、良くこのカフェにいるの。私のテリトリーに入ってきたね♪」と微笑む彼女に、心の奥が少し痛みました。

「・・・次はいつ会えるかな?」「そうだな、この週末はちょっと忙しくて。・・また来週だね、早いうちに連絡するよ。」彼女はちょっと不満そうな表情を見せましたが、うん、待ってる、と言って帰って行きました。

駅のホームで別れた直後、家に電話。遅くまでお疲れ様、と妻の声。僕はいつまでこんなことを続けるのだろう・・・。

ごまかし

彼女と出会ってから、僕らは頻繁にデートを重ねました。食事に行ったり、ドライブに行ったり。何度もキスをしました。お互いのことを色々話しました。仕事のこと、両親のこと、小さい時のこと、昔の恋愛のこと。

彼女のことを知れば知るほど彼女のことが愛しくなり、結婚していることは言い出せなくなっていました。彼女はいつも「ずっと一緒にいてね」「拘束なんかしない、邪魔になりたくないの。私を一番に思ってくれればそれでいいの」と言います。「僕の今の気持ちに嘘はない。」「もし、結婚といった話になれば、それはその時誠実に、その時に妻の状況も考慮して考えればい」・・・、そんな言葉で自分を、そして彼女をごまかし続けています。

結婚

妻とは友人の紹介で知り合いました。何度か会った後、付き合うことになったのですが、彼女はその早い段階で、自分の家庭環境について話してくれました。当時の僕にとって、それは付き合いを妨げる理由にはなりませんでした。

やがて結婚を意識するようになり、僕の両親に彼女の話をしました。しかし両親は結婚に反対しました。彼女の家庭環境が原因でした。一度は彼女との付き合いをあきらめようともしましたが、結局親の反対を押し切る形で彼女と結婚しました。「自らの信念に基づき結婚するのだ」と信じていました。

閉塞感

妻との生活には「閉塞感」を感じていました。決して妻を嫌いになったわけではないのですが、正直僕は疲れていました。妻には決して分かってもらえない、肉親に会えない辛さと同時に、共に生活する中でどうしても見えて来る嫌な部分に触れる機会が増えてきたこともあったでしょうか。仕事の辛さから逃げるために(僕にはそう思えた)子供を持ちたがる妻に、なんともいえない、嫌悪感に近い感情すら抱いていました。一方で、平凡で平和な家庭を築きたい、そんな思いも自分の中にあることに気が付いた頃でした。・・・でも、それは今の妻には望めない。彼女に出会ったのは、そんな時期でした。

告白

彼女との出会いは2ヶ月前でした。彼女のバイト先に僕が訪れ、アドレスを聞かれたのがきっかけでした。3日後に食事をし、一週間後に告白されました。「僕も好きだよ。」・・・どうせすぐ終わる、しばらく楽しい時間が過ごせればいいじゃないか、それだけの軽い気持ちでした。

彼女

そんな生活を送り、日に日に迷いと後悔の芽が生まれているなか、彼女と出会いました。彼女は7つ年下の、目のかわいい女性でした。「あなたの空気に惹かれるの」と真っ直ぐな瞳をして、僕に告白をしてくれました。彼女は僕に妻がいることを知りません。未だに僕は言えないでいます。